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顧客価値 水平的差別化による新たな価値

中小製造業の商品開発を伴走・支援 TECH-TOSHIです。 

 

今回は、東京理科大学 MOT(技術経営)における 経営戦略とマーケティングに関連する講義から、『顧客価値 水平的差別化による新たな価値』について、ご紹介します。 

 

1.ポイント

内容は、『顧客が認識する価値に影響する要因の選択と集中から、独自のビジネスモデルへでした。

 

水平的差別化は、受け入れてくれる顧客は限られてしまう可能性が高いため、限られた「ニッチ市場」に対して提供するだけの結果になりやすい。

 

では、どのようにすれば競争優位を持続でき、また競争構造を転換すればよいのか?

 

1.戦略キャンバスと価値曲線(ブルー・オーシャン戦略)

 ブルー・オーシャン戦略は、

 『企業は競合のない「ブルー・オーシャン」を開拓することで、

 同じ競争次元で血まみれの競争を展開している「レッド・オーシャン」 から脱出し、収益性を高めるべきである』 と主張する。

 

 ブルー・オーシャンを開拓するには、買い手に提供する価値を見直して、競合を回避する必要がある。

 

 競合回避のための戦略策定ツールとされているのが、「戦略キャンパス」と「価値曲線」である。

 

 「戦略キャンバス」を活用して、競合を回避するためには、戦略キャンバス上の要因について、

   1)取り除く、2)思い切って減らす、3)大胆に増やす、4)付け加える、 

   のアクションが推奨されている。

 

 顧客が認識する価値に影響する要因を、戦略キャンバス上で新たに付け加えたり取り除いたりすることで、

 競合企業とは大きく異なる価値曲線を顧客に提案し、水平的差別化の実現を図ろうとするのが、ブルー・オーシャン戦略である。

 

 そして、価値曲線が従来からの競合企業と大きく異なることは、「ビジネス・モデル」が異なること

 それゆえビジネス・モデル実現のために必要とされる組織能力や資源の組み合わせが異なってくることを意味している。

 

 独自のビジネス・モデルや組織能力は、ライバル企業による模倣を困難にする

 

  事例)QBハウス

     競合している一般の理髪店が、QBハウスが提供している価値曲線を理解したとしても、

    ビジネス・システムが違いすぎるため、伝統的な業態を保ったままでQBハウス的な価値曲線を実現することは難しい。

  

 ※楠木(2006年)は、水平的差別化を行なった上で、差別化次元が「見えない」と、競合による模倣・同質化が困難になり、

  競争優位の持続性が高まると指摘している。

 

 出所)網倉、新宅、『経営戦略入門』、P213-216

 

2.講義からの気づき

講義から気づいたことは、

 

『差別化は、注力しないことを決めて、メリハリをつける』 です。

 

ここで、ブルーオーシャン戦略に対して、ファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略を紹介します。

 

ファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略では、

 

とびきり優れた企業は、すべての取引を5つの要素(価格、サービス、アクセス、商品、経験価値)に分類した場合に、

 

5つの要素のうちどれか1つで、「市場を支配:5点」し、もう1つの要素で「差別化:4点」、残り3つの要素で「業界標準:3点」のレベルを保っているとしています。

 

ここで、注目すべきは、5つの要素における理想的なスコアが、5、4、3、3、3 ということ、

つまり、2つ以上の要素で5点、4点を目指してはいない ということです。

 

出所)フレッド・クロフォード、ライン・マシューズ、『競争優位を実現する ファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略』

 

3.現状

新たな商品開発を行なう際、 

とかく、競合と比べ、商品・サービスに求められる要求項目の全てにおいて、優位を保とうとしがちではないでしょうか?

 

要求項目の一覧表を作成し、目標値を記載・達成できるかどうかを、競合と比較しながら検討・チェックする です。

 

すべての要因でトップにならないといけないかのように思われますが、

ブルーオーシャン戦略も、ファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略も、全ての要因で優位になれとは言っていません。 

 

つまり、

前提として、顧客へ提供すべき価値の観点を考慮すれば、全ての要求項目が競合に対して優位である必要はないかもしれません。

 

4.解決策

 「やらないことを決めることが戦略立案」と言われることがあります。

 あれもこれもと優位を保つのではなく、視点を変えて注力しないところを決める という逆転の発想も必要と思われます。

 

また、ファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略においては、

「現代ビジネスの通貨は、商品価値ではなく、人としての価値観」と言っています。

 

つまり、消費者が求めているのは、商品やサービスではなく、「価値観」だということです。

 

よって、価値観という観点から、商品やサービスをいかに提供していくかが、差別化の鍵を握っており、

そして、消費者が求めるものは、「明確さ」、「安心」、「確実性」、「信頼」 と述べています。

 

5.今後の課題

 「モノづくりではなく、コトづくりを」 と言われて久しいのですが、なかなか実現できないのは、

 

顧客へ提供すべき価値の検討において、顧客の求める 明確さ、安心、確実性、信頼 を、考慮できていないからなのかもしれません。

 

よって、顧客の価値観へ影響を及ぼす要因を考慮した上で、商品・サービスの開発における差別化の検討が課題と思われます。

 

今回は、東京理科大学 MOTにおける 経営戦略とマーケティングに関連する講義から、『顧客価値 水平的差別化による新たな価値』について、TECH-TOSHIよりご紹介しました。