· 

顧客価値と競争優位

 中小製造業の商品開発を伴走・支援 TECH-TOSHIです。 

今回は、東京理科大学 MOT(技術経営)における 経営戦略とマーケティングに関連する講義から、『顧客価値と競争優位』について、ご紹介します。 

 

1.ポイント

内容は、『評価が分かれる製品属性の差別化の追求は難しい!でした。

 

1.知覚品質と2種類の差別化

  顧客による品質(製品属性)の認知には、顧客が「望ましい」と判断する評価方法が一致しやすい製品属性と、

    そうでない属性がある。

  それに対し、消費者によって判断が分かれる製品属性もある。

 

  消費者の評価方法が一致している製品属性に沿った差別化は「垂直的差別化」と呼ばれ、

    評価が分かれる製品属性に沿った差別化は「水平的差別化」と呼ばれる。

 

 (1)垂直的差別化

   どうすれば顧客に価値をもたらせるかが分かりやすい。

   目指すべき方向は明らかであるが、望ましい方向性が一致していても、複数の属性間にはトレードオフ関係が存在し、

        同時に品質水準を高めるのが困難なことには注意しなければならない。

   垂直的差別化は、トレードオフ関係にある製品属性の組み合わせにおいて、各属性のレベルを他社よりも向上させることによって

        達成される。

 

 (2)水平的差別化

   製品属性の評価方向が一致しない「水平的差別化」の場合には、垂直的差別化に比べると目指すべき方向が明らかに

  なっていないため、一筋縄ではいきにくい。

   水平的差別化を志向する企業は、消費者が価値を認める製品属性の組み合わせを変化させたり、同じ組み合わせであっても

  各属性に付与される比重を変えようと試みる。

 

   水平的差別化を目指した活動の多くは、必ずしも結実するとは限らない。

  また、水平的差別化に成功したとしても、ライバル企業に模倣されてしまうと競争優位は持続できない。

 

出所)網倉、新宅、『経営戦略入門』、P210-213

 

2.講義からの気づき

 講義から気づいたことは、

 

 『顧客の評価が一致しやすい品質を持つ商品・サービスは、価格競争になるのではないか』 です。

 

垂直的差別化は、どうすれば顧客に価値をもたらせるかが分かりやすい とのことから、競合に模倣もされやすいと思われます。

 

また、各属性のレベルを競合より向上させることが必要となると、機能を付加したり、ある機能の特性をさらに向上する方向となるため、それが行き過ぎて過剰品質になる懸念があります。

 

 

技術経営

3.現状

東京理科大学 MOTのとある講義でご講演されたゲストの方で、『起業家の世界観に投資をする』という方がおられました。

 

 ▷ビジネスモデルではなく起業家の世界観、『志』が起点。

 ▷誰も求めていないものを、押し付ける。結果、世界を変えることができる。

 ▷一見、不合理なものに見えるが、見る人によっては合理的に見えるのがワイルドなアイディア。

 ▷ワイルドなアイディアは使って見ないとわからない。

 ▷デザインファーストのプロセスは全く役に立たない。

 ▷世界観を持って、アートファーストでコンセプトを作れる人が必要。

 

従来の日本の製造業は、市場調査をして顧客の声を聞き、要求品質として数字を目標値として設定し、その要求に沿った製品を出してきました。自分もまた、要求品質表を作成し、その要求特性をクリアすべき開発を進めてきました。

 

しかしながら、このようなやり方では、他社と同じようなコンセプトで似たような品質レベルの商品やサービスとなりがちです。

 

上記の思想は、その対極に位置するものです。

 

 

4.解決策

必ずしも、 デザイン志向やエンジニアリング志向である必要は、ないのかもしれません。

 

▷近年、創出すべき顧客価値の内容が、モノからコトへ変化して複雑になった。

▷かつては、カタログスペックで明示できる形式知的な価値(これが垂直的に差別化された製品品質に相当する?)が顧客価値に

 結びつき、競争優位をもたらしていた。

▷しかし、現在は、ユーザーの経験価値(ユーザーエクスペリエンス=UX)が鍵を握る。

 

出所)延岡、「アート思考のものづくり」、日本経済新聞出版

 

 使ってみて初めてその価値に気づくのが経験価値、そしてそれは、最初は分かりにくいもの、ということならば、

経験価値とは水平的に差別化された顧客価値に近いのではないでしょうか。

 

5.今後の課題

今後は、顧客へ与える価値の種類として重要になってくるのは、情緒的価値と思われます。

 

従来は、機能的価値(カタログスペックで明示できる形式知的な価値からくる)と経済的価値(コストからの価値)の観点から訴求していれば商品・サービスが売れていたのですが、現在は、デジタル化の普及からのコモディティ化により機能的と経済的な価値からは、競合との違い(差別化)がなかなか見いだせなくなってきているようです。

 

そこで、数字では表すことができない情緒的な価値が、顧客への訴求ポイントになると考えられるからです。

 

今回は、東京理科大学 MOTにおける 経営戦略とマーケティングに関連する講義から、『顧客価値と競争優位』について、TECH-TOSHIよりご紹介しました。